今回は、遺産相続の対象者が認知症の場合に
必要になる特別代理人選任手続きについてです。
◆遺産相続手続きは自分でできるんじゃないの?
父親の四十九日も終わり、
遺産相続の手続きをすることにしました。
相続人は認知症の母親と私の二人だけです。
遺産は不動産と僅かばかりの預貯金ですが、
この手続きはたいへんでした。
親子の相続なんだから、むずかしくないだろう
「自分でもできるんじゃないの」
くらいの気持ちでした。
父親の成年後見保佐をしていたときの監督人が
司法書士の方だったので、最初に相談しました。
不動産(住居と少し離れた場所にある更地)と
預貯金を母親と私で折半することになります。
不動産の評価額は住居も更地もほぼ同額、
預貯金は私が立替ていた介護費用と精算できれば
実施的には不動産をどう相続するかになります。
◆相続者間で利益相反が発生しています…???
母親は認知症でかつ寝たきりなので、
子で成年後見人の私が全部相続してもいいように
思うのですが…、法律上そうもいかないんです。
母親の成年後見人を私が務めているので、
遺産相続にあたって利益相反が生じるとのこと。
遺産相続の当事者間で利益相反すると
もろもろ手続きが発生します。
母親の特別代理人となってくれるひとの申請を
家庭裁判所にして審判を受けなければなりません。
親の介護は全部じぶんがしているのに…、という
気持ちがあるとこの手の手続きは面倒に感じます。
親と離れて暮らしていたので、役所も裁判所も
遠く離れた場所にありやりとりがたいへんでした。
◆母親の特別代理人は誰に頼めばいいの?
特別代理人の候補は者、制約条件がないので
親戚でも知人でも候補者として申請できます。
ただ裁判所がからむと親戚でも頼みづらいし、
候補者も財産の報告や、遺産分割協議書の内容で
母親の利益が保護されていることを説明したり、
文書を提出するなどを考えると、おいそれと
引き受けられないし躊躇すると思います。
私の監督人だった司法書士の方は、他にも家庭裁判所
から監督人の業務を受けているので、特別代理人を
引き受けてもらうことが出来ませんでした。
裁判所との関係とか、財産開示とかもろもろ理由が
あって引き受けにくかったのかもしれません。
親戚に依頼するにも、高齢で特別代理人についての
説明も難しいし、裁判所からの書類に返信するのも
難しいと思い、日頃お世話になっている会計士の方に
事情を説明してお願いしました。承諾していただいた
ときは、こころからほっとしました。
◆特別代理人は信頼できる人に依頼する
特別代理に人には、家庭裁判所から本人の
財産状況などを記入する調査票が送られます。
財産状況以外にも特別代理人依頼者との関係や
金銭の借用関係なども問われます。身辺調査を
されているのと同じなので、信頼できるひとに
お願いするのが無難です。
こうなると法律上は、誰に頼んでもいいのですが、
気軽に頼める代物ではありません。
◆遺産分割協議書の作成
遺産相続のための特別代理人選任手続きでは、
母親の特別代理人の自著と実印を押印した
遺産分割協議書(案)が必要になります。
遺産分割協議書は定められた書式はありません。
ネットで検索したものをひな型にして自分で作成
しました。誰の遺産を、誰とのように分割するか
を記載します。チェックされるのは、不動産だと
登記簿内容との整合性、預貯金の残高などです。
他に遺産が見つかったら協議することなども
念のため記載します。私は他に特別代理人との
関係と選任理由を記載したものを添付しました。
担当書記官から、記載内容に関する確認と
特別代理人との関係·報酬の有無などの確認が
ありました。
◆書類と家庭裁判所に提出する前にすること
特別代理人のお願いをした方とは、しっかりと
遺産分割の考えかたや、代理人を必要とするひとの
状況把握をしてもらっておく必要があります。
また、報酬に関しても事前に決めておくことが
良いでしょう。特別代理人として報酬を支払うと
家庭裁判所に報告しなければなりません。
相続するものが少なければ、ひとつひとつの相続
手続きも簡単に済むので、特に報酬はいらないよ
という方もいると思います。
◆不動産の遺産相続手続き
特別代理人候補者が家庭裁判所で認められて、
不動産は私と母親がそれぞれ遺産分割協議書に
記載された内容で相続できることになりました。
知人に司法書士の方を紹介してもらって、
特別代理人をたてたかたちでの相続登記をしました。
準備した書類
・戸籍謄本 父親分(出生~死亡)、母親(現在)
自分の分(現在)
・住民票 父親(除籍)、母親、自分
・固定資産評価証明書 (土地、家屋)
・名寄帳の写し (父親名義の不動産)
・印鑑証明書 (特別代理人、自分)
・特別代理人選任審判書
・後見登記事項証明書
・登記済権利証 (土地、家屋)
・固定資産納税通知書(課税明細書)
・公的身分証明書 (自分)
・遺産分割協議書(自著、実印)
・委任状(登記用)
・委任状(評価証明・戸籍取得用)
◆相続登記に期限はない
実は相続登記には期限はありません。
田舎に戻るつもりがない場合、不動産の
相続は固定資産を支払うだけのもので、
用途がなければ負債と同じです。
相続登記には期限はないので、放置している
ひともいるでしょう。また、相続人が多くいて
遺産分割協議がうまくまとまらず放置されている
物件も多いと思います。
所有者不明の不動産が増える理由が
なんとなくわかりました。土地などは自治体に
寄付したくとも受け付けてくれません。
税収入があった方が自治体は嬉しいですからね。
特別代理人制度は、もともとは相続人が未成年者
だった場合の制度だと思います。それが認知症の
相続人が増えてきて、法律上利益相反となことが
多くなり特別代理人をたてる必要性が増えてきて
いるんだと思います。成年後見人制度を利用する
ときは、後々の遺産相続の考慮も必要ですね。
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